2017開始のinOui（イヌイ）って？TGVの何が変わる？

フランス人が誇るTGV（テジェヴェ）は、SNCFが経営する高速鉄道。日本の新幹線にあたります。
2017年7月にinOui（イヌイ）がスタートするというニュースが出て、TGVがinOuiに改名するの？とも思った人もいると思います。
franceinfoの動画や、Les Echos.frの記事の”abandonner l’appellation TGV”（TGVという呼び名を捨てる）という表現などを見ると、そういう気もしますよね。
でも、inOuiに改名されてTGVという名前が消えるというわけではありません。

inOuiやOuigoはサービス名、TGVは総称だけに

パリ-ロンドン間のTGVはEurostar ユーロスター、パリ-ブリュッセル間のTGVはThalys タリスと名付けられています。
フランス国内を走るTGVも、格安サービスには、2013年開始のOuigoや、IDTGVという名前がつけられていますが、昔（40年前）からある普通のTGVにはサービス名がありませんでした。
サービス名もTGV、ものとしての名前もTGVという、ザックリした状態だったんですね。
日本で例えるなら「こだまxxx号」と「新幹線xxx号」が混在しているかのような。

その普通のTGVに新しくサービス名をつけて、快適さをアップしてブランド化し、2020年頃やってくるであろう他社との競争に備えよう！ということで作られたのが、inOuiです。

今後、フランス国内TGVは、ローコストなOuigo（ウィゴー/ウイゴー）が25%、値段が高めで快適なプレミアムTGVのinOuiが75%という割合で二分化されるそうです。
（「こだま」のような）サービス名としてはOuigoやinOui、（「新幹線」のような）総称としてはTGVが使われることになるわけです。

現在、TGVの年間乗客数は1億500万人。SNCFはこれを2020年までに1500万人増加させることを目指し、
・格安サービスで新規顧客を開拓しつつ、
・3年間で25億円かけて、新車両購入、旧車両リノベーション、自動改札ドアの設置、wi-fiなどのネット環境強化、良いサービス提供のためのスタッフ教育なども行っていくとのこと。

入口ドアの自動改札機設置により、車掌さんが車内を回って検札せずに済むようになり、乗客への細かい対応ができるようになる・サービス向上につながるとSNCFは見込んでいます。
快適さは上げてもチケット料金の値上げはしないつもりだそうです。

inOuiは何が違う？

格安なOuigoと差別化するため、快適さを追求するということで、

wifi強化
“LGV”と名付けられた新しい車両、またはリノベーションされた車両
椅子の下に収納スペースがある快適なシート
座席を選べる
ビュッフェ車あり
自転車置き場あり
今後自動改札導入でサービスも向上

などが特徴。あとは、乗客層の違いもポイントになるかもしれませんね。

inOuiという名前

Ouiはフランス語で、はい（英語のYes）という意味ですが、SNCFは、Ouiブランドでサービスを展開しています。
“Ouigo”と”inOui”の他には、バスの”Ouibus“や、シェアカーの”Ouicar“があり、まもなくチケット予約サービス Voyage SNCF.com が”OuiPoint SNCF“(oui.sncf.com)に変更される予定だそうです。

inOuiは、フランス語の形容詞 inouï（イヌイ前代未聞の、信じられない、などの意味）にかけた言葉遊びにもなっています。

フランス人の反応は、 20minutes.frの記事などにもまとめられています。「Ouibus、Ouicarの流れで、OuiTGVにすればいいのにバカバカしい」「TGVが時間通りに来たらそれこそまさにinouï（驚き）。定刻運行して！」「今さらサービス教育強化って…今までやっていないのが逆に驚き」など、懐疑的な声や批判が目立ちます。
inOuiに対してというよりも、日頃のTGVに対する不満や苛立ちをぶちまける機会になっているようですね。

まぁ、エッフェル塔が作られた当時、フランスでは変なデザインだ・景観が乱れると非難轟々だったといいますし、郊外電車Transilienの名称も不評だったりしましたから、フランスの風習という気もします