1964年の”Les parapluies de Cherbourg”『シェルブールの雨傘』は、1950年代末から1960年代のモード&デザイン、音楽も楽しめるフランス映画。
監督は、Jacques Demy ジャック・ドゥミ。
音楽はジャズミュージシャンのMichel Legrand ミッシェル・ルグラン。頭に残る曲作りの天才です。
可愛い衣装を着たCatherine Deneuve カトリーヌ・ドヌーヴが最高にきれいで、目も耳も満足できます。ミュージカルはいくつ見ても突如歌い始めるのに慣れなくてちょっと笑ってしまいますが
今回は、この映画の衣装と、好きな曲の歌詞についてメモします。
ストーリ&衣装お絵かきメモ
ざっくりいうと、貧しい恋人Guy ギーの子供がお腹にいる美女Geneviève ジュヌヴィエーヴが、(母親の願い通り)彼を捨てて金持ちの宝石商Cassard カサールと結婚し、ギーは諦めて幼馴染Madeleine マドレーヌと結婚。
ジュヌヴィエーヴとギーがかつて二人で「子供ができたらこの名前にしよう」と話していた名前をそれぞれ自分の子供にこっそりつけている、というストーリーです。
いつも頭のリボンが可愛いジュヌヴィエーヴ。マタニティもお人形風。
ピンクのコートに淡いオレンジのスリップドレスで、ギーと劇場へ。
ワンピースを見せて、「Attention, elle est encore pleine d’épingles. 気をつけてね、まだ針だらけなの」と言っていました。
昔は既製服があまりなかったから服はオーダーメードで作るのが普通だったと聞いたことがあります。
カサールさんと会った時のジュヌヴィエーヴは、頭の金色のリボン以外、全身ホワイト。コートのボタン部分は凝った波型のカット。
優しくてつつましい役柄のマドレーヌは、頭にスカーフをかぶってあごの下で結んだり、大きな水玉のワンピースにヘアバンドを合わせたり。カフェにいた赤いドレスxボブヘアの女性も印象的。
好きな曲&歌詞
この映画の中で一番好きな曲は、フワっと感がたまらない«Récit de Cassard»(カサールさんの話)。
ジュヌヴィエーヴが金目当てで結婚する優しい夫という、切ない立場のカサールさんが、ジュヌヴィエーヴのお母さんに打ち明け話をする時の歌です。
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歌詞を訳すと、こんな感じの意味です。
Récit de Cassard
Jacques Demy / Michel Legrand
Autrefois j’ai aimé une femme
Elle ne m’aimait pas
On l’appelait Lola, autrefois
Deçu, j’ai voulu l’oublier
Alors j’ai quitté la France
Je suis allé au bout du monde(* Mais la vie me paraissait sans attrait.
Et puis, le hasard
m’a mis sur votre route.
Dès que j’ai vu Geneviève
j’ai su que je l’attendais.
Depuis cette rencontre
ma vie a pris un autre sens.
À tout instant
c’est elle que je vois
Je ne vis que pour elle.)Je ne pense plus qu’à elle
J’ai voulu vous parler franchement
Vous ne m’en voudrez pas
il n’est bien sûr pas question
d’influencer Geneviève
Geneviève est libre(* Demain, je repars à Amsterdam pour trois mois
À mon retour, Geneviève me donnera elle-même sa réponse)
昔僕はある女性を愛していましたが
その人は僕を愛していませんでした
その頃ローラと呼ばれていた
その人を忘れたくて
僕はフランスを離れ
世界の果てまで行きました
(* 人生に魅力を感じず生きていましたが
偶然あなた達の元にたどり着き、
ジュヌヴィエーヴを一目見て、この人を待っていたんだと分かりました
出会った時から、僕の人生は変わりました
僕がいつも見ているのは、彼女のことだけ
彼女のためだけに生きています)
もう彼女のことしか考えられません
正直にお話ししたかったのです
気を悪くなさいませんよね
もちろんいけませんよ、
彼女を説得しては
彼女が自分で決めることです
ジュヌヴィエーヴの自由です
(* また明日から3か月アムステルダムに行きます
帰ってきたら彼女自身に返事を聞かせてもらいます)
ブラジル人歌手のElis Regina エリス・レジーナも、この曲をパリでのコンサートでフランス語で歌っていて、
『Como e Porque コモ・イ・ポルケ』にボーナストラックとして収録されています。アルバムメモ
エリスのバージョンでは、歌詞の(*)部分がカットされていて、ジュヌヴィエーヴと出会い人生が変わったという肝心の話が出てこないので、ローラにすごく未練があるみたいになっています
カサールという名前は傘にちなんでいるのかな?という考えが浮かんでしまうCassardさんですが、同じJacques Demy監督がこの3年前に作った映画”LOLA”『ローラ』(1961)の主人公でもあります。
『ローラ』を先に見ていた人は、『シェルブール』にカサールさんが再登場して、ローラの名前を出すのを見て、「おっ!」と思うでしょう。
(アヌーク・エメ演じる)セシルという幼なじみがダンサーになってローラと呼ばれるようになり、カサールさんは恋するけど、昔の恋人を待ち続けるローラは彼に目もくれず、結局恋人が戻ってきて、カサールさんは失恋して旅に出るというストーリー。
ミュージカルではなく、落ち着いた雰囲気の白黒映画です。
最近もイメージフォーラムでやっていました。
さらに、同監督が2年後に撮った『ロシュフォールの恋人たち』は、シェルブールより明るく楽しい雰囲気のミュージカル映画です。
理想の人との出会いを信じている美人双子姉妹の片方(カトリーヌ・ドヌーヴ)と、「まだ会っていないけどはっきり目に浮かぶ理想の女性」としてドヌーヴそっくりの肖像を描き、彼女を探し続けている青年が、ラストで出会うというストーリー。
音楽は、シェルブールと同じく、ミシェル・ルグラン。
楽しい気分になる音楽が頭の中に残って、ぐるぐるループし続けます。
ドヌーヴ、ルグラン、カサール、ミュージカル、地名… この3作はつながっていますね。
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