一般的フランス人のファッション観

自然体でカッコいいとフランスでも人気の女優・歌手のジェーン・バーキンが、
私はファッションを全く重視していないから、「ジェーンのファッションに憧れる」と言われたり、特集を組まれたりするのは不思議な感じがする、
というようなことを語っていました。

構わない感じがcool(かっこいい)?

パリの地元住民が多い地域を歩くと、
流行ど真ん中な人や、凝ったファッションの人より、ベーシック・シンプルな服をさらっと着ている人が多く、
「おしゃれなパリジャン・パリジェンヌ」というイメージと違うなと感じるかもしれません。

モード界でのフランスの地位は高く、フランスのブランドは人気があり、
流行に敏感な人や、ファッション好きなフランス人ももちろんいますが、
フランスでは、服よりも、他のこと(ヴァカンス、友達や家族との付き合い、旅行、趣味)にお金と時間と気を使いたいという人の割合が圧倒的に高いです。

平均的に日本人はフランス人に比べて何倍ものお金をファッションに注いでいるというデータを見たこともありますが、
実際周りのフランス人も、服にそれほどお金を使いません。
流行りものが好きな中高生でも、お金は大してかけないよと言っていたり。
服をしょっちゅう買いかえるなんて無駄という意見もよく聞きます。
また、お金がなくて服どころではないパリジャンや、
めんどくさがりやさんも少なくはありません。

女性はワンピースやキャミソールを着る時、ブラジャーのヒモが見えるのを全く気にしない(ヨレヨレでも平気で丸出し)し、
マフラー・スカーフの巻き方や、髪のまとめ方も、さくっと適当
男女ともに着慣れた服をパパッと着て出てきた感じの人がたくさんいます。

日本では、服が好きなのがおしゃれに見えるのに、
フランスの感覚に慣れると、
無造作にちょっと着古したくらいの(でも似合っている)服を着ている人の、ノンシャラン(構っていないよう)で力の抜けたさりげない感じの方が、不思議とcoolに思えてきます。
そういえばフランス映画の登場人物も、そういう人が多いですね。

ジェーン・バーキンもまさにそうで、「自分が好きで心地よければいい」と、服やバッグを体の一部のように自然な感じで(若干雑に)扱っています。
映画«Jane B. par Agnès V.&aquo;『アニエスv.によるジェーンb』(1988)でもそういう感じが出ています。

フランスでは、流行よりも自分の価値観を重要視していて、
自分に似合う、シンプルで着やすい、楽、快適、長く着られる、好みに合うなどを基本している人が多く、
批判やオリジナリティを好む国民性もあってか、
カラーやデザインや素材などに独自のこだわりを持っていて、流行を超越した自分オリジナルのスタイルを、何より大事にしている人もいます。

流行に左右されたり、見た目にやたら構うのは幼稚でダサいと考えている人も少なくありません。
頑張っておしゃれしなくても自分は土台とセンスがいいし、見た目以外の点でカッコいいからね、という自信が垣間見える人もたくさんいます。

日本では服を趣味の一つにしやすい?パリでは快適に過ごせるかが優先

なんで日本人はファッションにそんなにお金かけるの?なんでやたら買い換えるの?と聞かれることがあります。

学校で平安時代の物語を読んで育ったから、きれいなものが好きなのかな?
周りに合わせたい人が多いのかな?などとも考えられますが、
深刻な貧困層が比較的少なく、気候が温暖で、安全で清潔で、 好きな服を着やすいから、趣味としてファッションを楽しみやすい、というのも大きいかもしれません。
温暖だから、冬にミニスカートや薄い服も我慢すれば着られますし、
ブランドで固めてもスリに襲われる心配が少なく、
街が清潔だから、淡い色の服が汚れる心配もほとんどありませんから、
自分を着せ替え人形みたいにして遊ぶことができますもんね。

パリ郊外などの電車に、ハイヒールにブランドのバッグや時計で身を固めて乗ったら、
泥棒に狙われる可能性は上がります。
車で移動するならいいですが、そうでなければ余計なリスクが増えることに。
安全な地域を選んで歩き、コソ泥の警戒をしなくてはならず…
たまにならいいですが、毎日だと一緒にいる人まで疲れてしまいそう。
そういう意味では、パリの方が自由度が低いかもしれません。

フランスでは、気を使わなくて済む普段着を好む人も多く、
似合って楽ならOK、ボロくなったら買い換えるという人もいます。
機能面をまずクリアした上で、可愛いと思うものをちょっとプラスしたりするというのが、よくあるおしゃれの楽しみ方です。

確かに、緑の中で過ごしたり、ガンガン歩いたりするのが好きな人が多いパリの生活では、
公園の芝生に寝転んだりベンチに座ったりしても気にせずに済み、何時間歩きまわっても疲れない服装の方が、
断然自然で楽しく過ごせます。
最初は見た目重視だったのに、
パリに住んでいるうちに、歩きやすい靴・着やすい服にシフトしていくようになるというのは、よくあるパターンです。

私も服装で痛い目にあったことがありました。
パリ大晦日のイベントの時、まさか真冬にずっと屋外にいることはないだろうとたかをくくって普通のコート+ワンピース+タイツ+パンプスで行ったら、
実際は、途中小雪が舞って死ぬほど寒い屋外で2時間イベントを見るという苦行で、
青ざめて、歯がガチガチ鳴るという体験を初めてしました。
フランス人は当然のように、山にでも行くんかい!というほどの完璧な防寒服・防寒ブーツ。
パリでは機能を真っ先に考えないと楽しめないし、逆にカッコ悪いんだなと学習しましたxD

年齢や体型の制約がゆるい

日本の場合、年齢とともに膝や腕を隠して露出を減らす傾向がありますが、フランス他の国では、50代以上のマダムが膝上〜ミニスカートや、胸元や背中などが開いた露出の多い服を着るのはごく普通
おばあちゃんが華やかな明るい色の服を着るのも当たり前。
かなりふくよかな人が、ボディラインのはっきり出るぴったりした服を着ているのもしょっちゅう見かけますが、セクシーで素敵だったりします。

そういう意味では、Freedom!と歌い出したくなるような開放感、楽しさを感じます。
フォーマルでもない普段着なのに、「この年になったらこういう服を着なきゃ/着たら恥ずかしい」「流行に合わせなきゃ」などの制約に縛られるのは、不自由で窮屈で、もったいないと思えてきます。

そういえば、日本ではブランドや売り場にターゲット年齢層がはっきり設定されていて、
ショップやフロアが年代で分けられていることも多いですが、
フランスでは、価格帯やイメージで分けられていて、
色々な年代の買い物客が混ざっているショップが多い気がします。

流行、ブランドに対する考え方の差

「日本人旅行者は化粧や髪型が似てるし、変わった服や小物をつけてたり、
フランス人はまずしないような派手な色合わせをしたりするから見分けがつきやすい。
ブランドの買物袋をいっぱい下げてることも多いし」という話を聞くことがあります。

「生活や休暇や趣味を楽しんでもまだお金が余っていたら、
いいものを見る力を身につけて、素敵なブランドで物を買えばいい。
そうすることで、職人の技術が後世に残せるから、
工芸や芸術を保護するパトロンみたいな役割も担うことになる。
でも、物自体の素晴らしさや価値が分からず、お金もないのに、
見栄や評判や流行だけでブランド物を無理して買う若い日本人の気持ちは全くわからないな。
年齢や生活と不釣合いだと、親のぶかぶかな靴を履いている子供みたいでかっこ悪いのにね
という話になることもあります。

確かに日本では、フランスに比べて流行の影響力が大きいと思います。

日本は基本的に単一民族で、髪や肌色が似ているので、
「今年の流行はこれ」「こういう肌が理想」「今年の髪型」というように、
メディアで流行を操ることができますが、
フランス(特にパリ)では、あらゆる肌色、髪質、美的基準の人が混ざり合っていて、
土台がバラバラなので、右向け右の号令が出せません。
そもそも自分の考えを何より大切にする傾向が強いせいもあって、
流行は自分の好みに合う部分しか取り入れない、ということになるんでしょうね。

まとめ

モードの国と言われるフランス。
若干見飽きてくるほど、パリ中あちこちでモードなものが売られている状態。
ですが、日本人やストックホルム人などの方が、流行を意識している人が多い気がします。
フランス宮廷で貴族が外見を競っていた時代は過ぎ、一周回って逆に、人生の他の要素を充実させた方がいい!となったのかもしれませんね。

11/11/2007

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