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フランス人の多くが悩む冬ブルー*原因と一般的対処法

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フランスでは、およそ10人に1人(うち75%が女性)が季節性うつ(trouble affectif saisonnier)に悩まされています。季節の影響を受ける人は、人口の約半分もいるのだそうです。(Au FemininL’Express

「季節性」といっても、ほとんどの場合は秋冬です。
冬に気分が落ち込むことをblues de l’hiver / blues hivernal(ウインターブルー)や、déprime hivernale(冬期うつ、冬鬱)と言います。
原因、症状、フランスで一般的な対策についてまとめました。

ウインターブルーの症状チェックリスト

  • 砂糖、甘いもの、でんぷん質の食べ物が妙に食べたい
  • 食欲、体重が増加する
  • ちゃんと寝ても日中眠い、過眠になる
  • 頭がぼんやりして集中力が低下する
  • 疲労感がある、だるい
  • モヤモヤする、ネガティブになる、気分が落ち込む
  • やる気が出ない、興味がわかない
  • 足がだるい

(季節性でない)うつと似た症状もありますが、冬うつは、日照時間が減る季節だけ出るのが特徴。甘いものや脂肪分の多いこってりしたものが食べたくなって太る人もいます。

ウィンターブルーの原因

フランス ドア

冬うつは、秋冬の日照不足のせいで起きるとされています。
日本の関東などでは、冬晴れの日が多く、強力な天然暖房完備状態ですが、
フランスの多くの地域では、日照時間が短い上、太陽のパワーもかなり弱め。
夏はフランス、冬は日本が快適な理由で書きましたが、冬は一日中暗い日もあり、
晴れても午前中遅くならないと明るくならず、夕方より前にさっさと暗くなります。
フランスの外の明るさ平均は、夏100000ルクス程度で、秋は1500ルクス程度だそうで、
つまり秋の明るさは、夏の1/166
やっぱり、という感じです。

なぜ太陽を浴びないと冬うつに?

朝、強い光が目(網膜)に入ることで、セロトニンという神経伝達物質が脳内に増え、体内時計のリズムが整います。

セロトニンは、気分をよくする・落ち着かせる・幸福感を与えるといった精神安定効果の他、様々な働きをする物質です。
太陽光を浴びたり、歩行などのリズム運動をしたりすると増え、
不足すると、イライラ・モヤモヤしたり落ち込みやすくなったりするそうで、
セロトニンの数値が低い人は、依存症、うつ病、衝動的行動などを起こす傾向があるそうです。

セロトニンが変化してできるメラトニンは、睡眠ホルモンとも呼ばれる、眠気をつかさどる物質。
朝、強い光を浴びると、メラトニンの分泌が抑制されて、日中モードになります。
それから15時間後に再びメラトニンの分泌が始まって、夜モードになり眠くなります。
光とメラトニンが昼夜サイクルの切り替えスイッチ&タイマーの役割をして、
朝7時に目覚めたら、夜10時に眠くなるわけです。
冬季うつ病の人を検査すると、日中もメラトニンの量が減っていないことが多く、そのため眠気やだるさを感じるそうです。

また、朝の光には、体内時計をリセットする働きもあります。
もともと人間の体内時計は25時間周期なので、本来なら毎日1時間ずつ遅れが出ていくはずのところを、光を浴びると体内時計がリセットされ、ズレを修正できるのだそうです。
そうしないと時計がどんどんずれて昼夜サイクルが狂って、寝つきが悪くなったりするんですね。

ウィンターブルー対策

冬のヴァカンスで太陽を浴びに行く

太陽を浴びて、楽しく過ごして気分転換というのは、長めのクリスマス休暇をとれる人が多いフランスらしい解決法。
アフリカや南アメリカなど、あちこちにフランス海外県があるので、気軽に「国内旅行」できるのもポイントです。

太陽を浴びられなければリュミノテラピー

フランスなどの冬に暗い地域でポピュラーなのが、人工的な光を浴びる光療法
睡眠障害やうつ病などの治療や、体内時計を整えるのに効果を発揮し、冬の日照時間が短い北半球の国々で、早いうちから使われているそうです。

古代ギリシアの医者ヒポクラテスが、結核などの患者に日光浴をさせて効果を実感していたのは、紀元前4-5世紀ですが、
アメリカの精神科医 Norman E. Rosenthal(ノーマン・ローゼンタール)が照明器具による光療法(高照度光照射療法 ルミノセラピー)を始めたのは、だいぶ後の1980年代。

フランスでは、luminothérapie(リュミノテラピー / ルミノテラピー)、photothérapie(フォトテラピー)、luxthérapie(リュクステラピー)などと呼ばれ、普及しています。

光療法ライトの光は、明るくて太陽に近いけれど、紫外線や赤外線を含んでおらず、副作用はほとんどなし。
病院でも、自宅でも実践でき、毎日30分〜1時間を1ヶ月〜6週間続けるだけで効果が出るそうです。
光療法用ライト(lampe de luminothérapie)は、家電店などで購入でき、安いものは数千円からで、1−3万円程度のものが多め。
効果があるのは2500から10000ルクスのライトだそうで、Amazonフランスのランキング上位↓も、10000ルクスです。


夜明けランプ

光療法ランプは、冬うつによる睡眠障害にも効きますが、
睡眠改善・体内時計調整が目的なら、タイマーセットした時間にかけて徐々にじんわり明るくなっていくsimulateur d’aube(夜明けシミュレータ、朝日ランプ)、lampe de réveil(お目覚めランプ)というものもあります。
徐々に明るくなっていく光がまぶた越しに目に入ることで、自然にスッキリ目覚めることができるというもので、アラームサウンドやラジオ付きの商品が多め。
寝起き改善+ベッドサイドライト+目覚まし時計になるので、一石三鳥ですね。

関東などでは7時頃には明るくなるので、カーテン(のベッド側じゃない方を)ちょっと開けて寝ればいい話ですが、
暗い中起きる人には、強い味方になるかもしれません。

↓擬似朝日ランプというだけあって、いかにも太陽を意識したデザイン:)
今のところ日本への配送料と変換プラグを考慮してもAmazon.frの方がかなり安いですが、日本にも輸入されているようです。
先ほどの光療法ライトと、この夜明けランプは、どちらも「光療法」カテゴリで売られていますが、明るさも使い方も違う別物です。


食べ物

幸せ物質セロトニンの原料は、トリプトファン(アミノ酸の一種)。
トリプトファンはビタミンB6と合成されて → セロトニン → メラトニン へと変化するので、いい気分や快眠には、栄養が大事だというのは分かりますね。
フランスで冬ブルーに効くといわれている食べ物は、たくさんあります。

  • お魚:オメガ3とビタミンDがたっぷり含まれていて、天然の抗うつ剤と言われたりします。
    ビタミンDは太陽光を浴びることで体内に作られるため、日を浴びないと不足します。お魚に助けてもらいましょう!

  • くるみ:形も脳みたいですが、脳にいいとされる栄養がいっぱい含まれています。
    アルファリノレン酸(オメガ3脂肪酸)やビタミンEが特に豊富で、その他のビタミン、ミネラル、トリプトファンも、多く含まれています。
    くるみ以外には、アーモンドやヘーゼルナッツなどもいいとされています。
    ナッツは、リスが冬眠前にせっせと集めているイメージがありますが、越冬できちゃうほど栄養豊富なようですね:D

    トリプトファンは、大豆、ごま、カシューナッツ、カツオ、マグロに、より多く含まれています。
    マグロ、カツオ、大豆は、ビタミンB6とトリプトファンを両方含んでいますので、いかにもよさそうな感じがします✧

  • 卵:オメガ3やレシチンが豊富で、栄養素が脳に入るのを助け、脳の働きを改善してくれるそうです。

  • ココア、ビターチョコレート:脂肪分少なめでカカオ率が高いチョコ1かけらで十分。
    濃いめといっても、カカオ率90%以上のチョコは好き嫌いが分かれますね。私は80%台が好きです。

  • ほうれん草:鉄分が多く、貧血による集中力欠如や疲労感を改善することができるということで、よく挙げられます。
    日本にある食材だと、枝豆や小松菜、サラダ菜の方が効率よく鉄分摂取できるようです。

  • オレンジ、グレープフルーツ、レモン、みかんなどの柑橘系フルーツ:ビタミンCや、気分を良くしてくれる葉酸、セロトニン分泌を助けるビタミンB12が含まれています。
    ビタミンCを摂るなら、柿、キウイ、パプリカなどもいいですね。

  • 全粒粉パン:ビタミンBが豊富。日本なら玄米もいいですね。ビール酵母をサラダやヨーグルトに1さじかけても、ビタミンBが摂れるそうです。

セントジョーンズワート(弟切草)

Herbe aux mille vertus(多数の効力を持つハーブ)と言われ、昔からフィトテラピー(薬用植物療法)で使われてきた薬草、Millepertuis(セントジョーンズワート、オトギリソウ)。
ドイツをはじめとするヨーロッパでは、軽度・中度うつや冬期うつ病の治療に使われているそうです。
治療の際は、人によって300mg入りカプセルを1日1〜3回摂取するとのことで、摂りすぎは危険。
日本でもサプリがたくさん出ています↓が、そのように薬として使われているのを考えると、他に薬を飲んでいる人はお医者さんに相談した方が良さそうな気がしますね。

ガーデニングでオトギリソウを育てて、20g弱のお花と、茎数センチを、1リットルの水に入れて煮出してティザーヌ(ハーブティ)を作る、というのもいいですね。

外出したり人に会ったりして気分転換する

寒いからといって部屋にこもって過ごすのは悪循環。少しでも光を浴びて楽しめば、セロトニンが増えます。

運動する

嫌いな運動を無理してするのではなく、自分の好きなタイプの運動を。
歩行などのリズミカルな運動はセロトニンを増やすので、外で運動すれば光も浴びて効果倍増。快眠にもつながりますね。

関連フランス語表現

blues de l’hiver / blues hivernal

日本語では「ウィンターブルー」が一般的らしいのでそう書いていますが、blues ブルーズは、音楽のブルースも意味する、英語由来の単語です。
色の青を意味するフランス語は、bleuです。EとUの順番が英語と違います。

hiverは冬、hivernalは冬の です。
A cause des grignotages répétés, tu as tendance à t’empâter.
何度も間食(つまみ食い)するせいで、太りがち。
Si te sens tout(e) raplapla,…
疲れ切ってクタクタだと感じたら、…
La lumière (…) stoppe la production de mélatonine, appelée aussi hormone du sommeil.
光が、睡眠ホルモンとも呼ばれるメラトニンの生産を止める。
1. lutter contre le blues de l’hiver
2. éviter le blues de l’hiver
3. Chassez le blues de l’hiver
4. Vaincre le blues de l’hiver
ウィンターブルー
1. と戦う
2. を避ける、
3. を撃退する、
4. を克服する。
対策といっても、いろいろな言い方がありますね。

まとめ

あたたかくて気持ちいいだけじゃなく、心と体を整えてくれるなんて。
秋冬のひなたぼっこは、お金では買えない贅沢ですね✧

参考記事

  • http://www.lexpress.fr/styles/psycho/chassez-le-blues-de-l-hiver_701558.html
  • http://www.aufeminin.com/zen-stress/vaincre-le-blues-de-l-hiver-s638242.html
  • http://www.marieclaire.fr/,8-aliments-sante-pour-combattre-le-blues-de-l-hiver,726876.asp
  • http://sante-medecine.journaldesfemmes.com/contents/681-depression-saisonniere-hivernale
  • http://www.cosmopolitan.fr/,qu-est-ce-que-la-luminotherapie,1915200.asp
  • http://www.cosmopolitan.fr/,le-blues-de-l-hiver-une-realite,2230,1001071.asp
  • http://www.cosmopolitan.fr/,bien-choisir-son-simulateur-d-aube-type-de-lumiere-a-utiliser,1904943.asp
  • http://www.ladepeche.fr/article/2015/10/18/2200222-5-conseils-pour-lutter-contre-le-blues-de-l-hiver.html
30/10/2017

Message

  1. […] んだけど。日光をあびる時間がへると、セロトニンが不足してうつ気味になるそう。(cf.冬ブルー)フランスに来たばかりの頃は、秋や冬の寒い時期にもふるえながらレストランのテラ […]

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