フランス語の本 #1 Oscar & Mondo

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Oscar et la dame rose – Eric-Emmanuel Schmitt

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フランスの劇作家エリック=エマニュエル・シュミットの『100歳の少年と12通の手紙』。映画化されたらしいですね。
私がamazon(jp)で買ったのはちょっと不気味なイラストが表紙のReclamのペーパーバックで、400円くらい。本文はフランス語で、各ページ下にドイツ語の注釈(単語訳)、巻末にドイツ語の解説がついています。現在は表紙が変わっているようです(↓)。

10歳の少年が書いた手紙という設定だけあって読みやすく、ボリュームも少ないので、数時間で読めます。仏語学習の教材にも使えそうです。

ガンにおかされた少年Oscarは、手術が無駄に終わって以来、腫れ物に触るように気を使う大人たちと親にうんざりしていていますが、病院にやってくるボランティアのローズおばあちゃん(Mamie-Rose)のことは大好き。今までと同じ態度で率直に接してくれるからです。彼女のすすめで、オスカーは毎日神様に手紙を書くことに。年末の12日間は「1日=10年」として過ごすことも提案され、毎日10歳ずつ年をとることにします。

…と読むと、辛く悲しいドキュメンタリーや宗教的な話をイメージしそうですが、違います。悲しいけど悲壮感はなく、ちょっと笑えるところも多い本です。
主人公は神様についてほとんど知らず、宗教をさほど掘り下げるでもないので、日本人のいう漠然とした神様に近いものがあります。病気によって外見が変わってしまったことも自然に受け入れているし、いつか死ぬということをみんなは忘れているだけで自分だけが死ぬわけじゃないと気付いてからは、死も受け入れます。入院患者仲間たちとのやりとりや、「神様、住所はどこなの」と書いたりする発想が子供らしくて、プチニコラを読んでいる時のような楽しい気分になります。
オスカーの話を聞いて、率直な意見やいいアドバイスをくれたりするローズさんは、善良で優しい老婦人というよりは、話の分かる豪快なおばあちゃん。愉快で頼もしい人物です。「内緒だけど私は昔プロレスラーだったんだ」と言って、どんなに強い敵でも工夫して倒していた現役時代の武勇伝をいっぱい聞かせて、楽しませてくれます。
前半部では、率直さを望む相手には、傷つけまいと気を使うよりも率直に接するのが一番なのだと感じましたが、誰のことも傷つけず、自分の得のためではなく相手のためだけにつく想像力あふれる嘘はいいものなのだとも思わされました。

Mondo Et Autres Histoires – Jean Marie Gustave Le Clezio

Le Clezio_Mondo

子供つながりで、ル・クレジオの『海を見たことがなかった少年―モンドほか子供たちの物語』。
フランスの学校でも教材として使われていました。主役は子供で、文は読みやすい「初めてのおつかい」的なものとはかけ離れた世界です。哲学的、抽象的というか、どちらかというとビクトル・エリセの『ミツバチのささやき』の方がまだ近い感じです。
読んでから数年、今でも印象に残っているのは、南仏の海辺でじっと朝日をみつめるモンド。先ほどのオスカーと年は同じくらいですが、こちらは家もなく一人きりで暮らす少年です。ある日どこからかやってきて、たまに市場の手伝いで小銭を稼いだり、人々に食べ物をもらったり、気に入った人たちとゆるく交流したりしながら一人で生きています。繊細で感受性が鋭く、好き嫌いがはっきりしているモンドは、海辺で日を浴びながら夢見るような目をして無口でじっとしていられる人が好きで、質問攻めにしてくる人が嫌い。自分を養子にしないかと道行く人に聞くものの、質問されると逃げてしまい、本当に養子にしてくれそうな人には聞かない。そんな彼が好んで接する人たちと、たくさんの美しいものが印象に残る作品です。
以上、秋の夜長のプチ本メモでした。続きはまたいずれ。

27/09/2015

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